「特許取得」という言葉はよく耳にする言葉ではないでしょうか?
この特許を取得するのに手助けしてくれるのが弁理士です。
弁理士とは、特許、意匠、商標、実用新案などの知的財産権全般を取り扱う専門家です。幅広い法律知識を必要とし、国家資格を取得する必要もあります。個人や企業で多くの資金や時間を投資して開発した新商品や新技術を、守ることができるとても意義のある仕事と言えます。
同じ法律を扱う弁護士や会計士と比べてあまり知られていない弁理士ですが、具体的にどのような業務内容なのでしょうか?また、弁理士に向いている人とはどういった人なのでしょうか?
この記事では、弁理士の仕事内容や働き方、弁理士に向いている人を解説していきます。
- 弁理士の仕事内容
- 弁理士の働き方3つ
- 弁理士に向いている人の特徴
- 弁理士の仕事の魅力
弁理士と言っても、仕事内容や働き方は様々です。またそれにより、年収にも個人差があります。以下で、自分に向いている働き方、また、自分にも向いている職業なのか、詳しく見ていきましょう。
コンテンツ
弁理士の仕事内容は?大きく3つに分けられる!
弁理士の仕事内容を詳しく見ていきましょう。あまり耳なれない弁理士という職業ですが、法律や言語など幅広い知識を必要とし、特許を取得する時以外にも多くの仕事を担っているのが弁理士という仕事です。
細かい事務作業から経営に関わるコンサルティング業務まで、知的財産に関する仕事の中でも多岐にわたるようです。
以下のように大きく3つに分けられます。
- 知的財産権の取得業務
- 知的財産権の紛争解決業務
- コンサルティング業務
それぞれの内容について詳しく解説していきます。
知的財産権の取得業務
知的財産には、技術や製品のオリジナリティを認め保護する「特許権」、製品や建築物、デザインに関する「意匠権」、ロゴマークや商品名などに関する「商標権」、音楽や文芸などに関する「著作権」などがあります。
弁理士は企業や個人から依頼を受けて、こういった知的財産権を取得するために必要な書類作成と問題を解決し、できるだけ発明者が有利になるよう権利の取得を手伝います。
これらの知的財産権の取得には、特許庁への申請が必要です。しかし、この権利の取得には高度な専門知識が求められ、大変難しいと言われています。
申請された知的財産は本当に独自性があり、権利として認可するのにふさわしいものなのかを、特許庁によって徹底的に評価されます。特許庁という特許のプロが認可を出すほどの説得力を申請する際は揃えなくてはいけません。
そのため知的財産権の申請業務を特許庁に対して行うことは、厳しい試験を勝ち抜いた弁理士にのみ認められている独占業務になっています。
知的財産権の紛争解決業務
登録済みの知的財産をめぐるトラブルの解決も弁理士の仕事です。例えば、既に特許庁に申請、登録が済んでいる製品名を知らずに無断で使用した場合や、歌詞やデザインを無断で使用した場合などがあります。このように知的財産に対する権利の範囲というのは大変複雑に規定されています。
使用した側が無意識に権利を侵害してしまっている可能性も十分あり得るのです。
このようなことが起きた場合、弁理士は仲介に入り、解決にあたります。個人同士や企業同士、または企業と個人のトラブルも発生することもあります。
解決方法としては、当事者間での交渉や裁判による解決がほとんどです。近年では、日本企業と海外企業との間でトラブルが発生るすることも増えているそうです。そのため、弁理士は法律に関する高度な知識や、場合によっては外国語での交渉スキルも必要とされます。
コンサルティング業務
弁理士は知的財産の専門家としての知識を活用し、コンサルティングサービスを行うこともできます。例えば、企業が開発した最新技術を保護しながら、継続的に利益を得ることができるような戦略をアドバイスします。
しかし、知的財産に関するコンサルティングは、まだまだ方法論が確立されていないというのが現状のようです。そのため、担当する弁理士はより幅広い経営や法律に関する知識を必要とします。
このように弁理士は、知的財産の保護方法と、利益獲得を戦略的に考え企業、または個人に提案することができます。これも、知的財産のエキスパートである弁理士ならではの仕事だと言えます。
弁理士の主な働き方は?主な3種類を紹介!
ここまで弁理士の仕事内容を見てきました。弁理士としての仕事をスタートしたばかりの人は、どの仕事内容でもほとんどがどこかの事務所に所属しての勤務になるようです。
では実際にどのような働き方をすることができるのでしょうか?多くのが選んでいる働き方はどのような形なのでしょうか?以下の働き方をみて、自分に合った働き方を探してみましょう。
弁理士の働き方を3つご紹介します。
- 特許事務所に所属する
- 企業の知的財産部に所属する
- 独立開業する
以下で詳しく見ていきましょう。
特許事務所に所属する
弁理士試験に合格した人の就職先で一番多いのは特許事務所です。また、特許事務所では資格を取得していなくてもサポートとして働くことができるので資格取得にための勉強をしながら働くこともできます。
特許事務所の規模は数名~100名以上とバラつきがあり、請け負う業務の内容も多岐にわたります。大規模な事業所であれば、顧客は大企業が多くなります。また、その分業務内容も特許や、意匠、商標など様々な内容を扱うことになるため、通常よりも幅広い知識が必要となります。
一方、小規模な事業所では、ほとんどが中小企業や個人が顧客となります。知的財産のうち、特許だけや意匠だけというように特定の分野のみを扱うことが多くなります。
企業の知的財産部に所属する
弁理士には一般企業の法務部や知的財産部などで活躍する道もあります。
最近では自社ブランド製品の開発に取り組む小売業をはじめ、自社の中に知的財産部を設けていることもあります。社内に弁理士を置く企業は年々増加傾向にあるようです。その場合、弁理士はサラリーマンとして部署に所属することになります。
自社の弁理士が研究段階から深く関わることで特許をビジネスで活かすための戦略もたてやすく、また出願までを社内で行うことができコスト削減につながることからこのような傾向にあるようです。
自社製品を手がける企業であれば、自社の知的財産をどのように守り、どのように利益をだすかがとても大事になってきます。外部の特許事務所に任せられない、企業秘密を守りたいといった大企業にとって、知的財産部に所属する弁理士は大変重要な存在になっています。
独立開業する
弁理士として独立開業することはほとんどの弁理士が目標としているのではないでしょうか。企業や特許事務所に所属するよりも、さらに「専門性」を必要とし、他の特許事務所と差別化させることで多くの事務所の中から選ばれる必要もあります。
特許事務所での勤務経験を積んで独立開業する人がほとんどですが、特許事務所では書類を書いたり、事務作業がメインとなります。しかし、独立するとなると営業する必要があるため、最初はそこでつまずく方も多いようです。
実際に、最初は営業の仕方がわからず手あたり次第電話をかけて会ってもらう、などの努力をしている人もいます。
独立開業には「営業力」が重要となり、自分で案件を獲得する技術を磨く必要があります。特許事務所の仕事では、税理士など他の士業から得られることも多いため、士業の集まりに積極的に参加し、人脈を築く事も大切です。
また、特許事務所時代に気づいたお客様との信頼関係も独立開業後には大いに役立つようです。
どんな人が弁理士に?向いている人の特徴を3つ紹介!
これまで、弁理士の仕事内容や働き方を見てきましたが、法律に関する難しい仕事で自分にも弁理士になれるのか不安、、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
どのような人が弁理士になるのでしょうか?なんとなく、難しいイメージの弁理士ですが、向いている人とはどのような人なのでしょうか?
以下の3つの特徴で当てはまるものがあるか見てみましょう。
- 新しいものや新しい技術への関心がある人
- 好奇心のある人
- 一人でコツコツ取り組むのが好きな人
新しいものや新しい技術への関心がある人
弁理士は、新しいアイディアや製品が世に出る前にいち早く目にすることができるので、新しいものや技術への関心が高い人は弁理士に向いています。
顧客が取得しようとする知的財産権について出願書類を作成する際には、そのアイディアが世界で一番早く完成していること、権利を取得するにふさわしい内容であることを説明する必要があるので、新しいことへの興味は必須となります。
また国内だけでなく、他国への出願を行うこともあるためグローバルな視点で世界の新技術の動向を楽しめる人も弁理士に向いています。
自分が担当した新しいアイディアが世界を大きく動かす可能性があるという点に魅力を感じることができる人、新しい事に関心がもてる人が弁理士に向いていると言えるでしょう。
好奇心のある人
様々な分野に関して好奇心が持てる人も弁理士に向いているでしょう。
弁理士の仕事は、常に新しい事に触れ、技術を文章化するというクリエイティブな仕事でもあります。顧客と新技術開発の背景や市場の動向について議論することもあるかもしれません。
そのような場合には、経済的な情報や社会的な情報も必要です。技術に関することだけでなく、法改正などの分野に関しても常に新しい情報を仕入れておく必要があります。
このように幅広い事柄に興味を持ち、常に新しい情報やニュースをチェックしたり勉強したりする好奇心がある人が弁理士に向いているでしょう。
一人でコツコツ取り組むのが好きな人
弁理士は大人数でプロジェクトを実行する、といった仕事よりも、調べものをしたり、入力作業などが主な仕事となります。顧客から申請内容を聞き出し、その情報を文章化、出願書類を提出するという過程がメインとなりますので、一人でコツコツ作業に取り組むのが好きな人に向いています。
もちろん、発掘段階から出願手続きまで全てを一人で行うことは少ないですが、弁理士の仕事は他職に比べて一人で完結する業務が多いようです。実際に、特許事務所のうち、68%の事務所では所属する弁理士は一人で作業をこなしているようです。
また、実際の事務作業に加えて、日々の勉強や、情報収集は一人で行うことが多いと思いますので、やはりコツコツと作業を一人で進めることが得意な人にとっては弁理士は向いていると言えるでしょう。
弁理士のやりがい、魅力とは?4つのポイントを紹介!
ここまで弁理士の仕事についてみてきました。
決して簡単な、誰にでもできる仕事ではないことはここまでで理解できます。また、資格を取得した後も大変な仕事であることは創造できるでしょう。しかし、難しく大変な仕事であるということは、大きなやりがいを感じることができるのではないでしょうか。
このような大変な弁理士という仕事をするやりがいはどこにあるのでしょうか?ここからは弁理士の魅力をみていきます。
- 最先端の技術に触れることができ、保護できる
- 個人の仕事や努力が結果となって表れやすい
- 今までの経験や知識を発揮できる
- 経験を積めば、年収1000万も可能
以下で詳しく解説していきます。
最先端の技術に触れることができて自分の力で保護できる
まだ世の中にでていない最先端の技術や、研究開発段階の製品に触れながら仕事ができるのは弁理士の魅力です。権利化する前の技術や製品は顧客にとっては企業秘密とも言えます。そのような新しいものが世界に広まっていく過程に関わることができるのは弁理士だけです。
また世に出た最先端の技術や製品を保護することができるのも弁理士の魅力です。前述したように、無意識のうちに他者の権利を侵害されているということもあるのが事実です。そのような問題を解決に導き、その技術や製品を守るという使命感の下に働くことができます。
世に出た素晴らしい発明の保護のために仕事をすることは、責任感と重圧を感じることではありますが、その分やりがいは計り知れないという実際の声もあるようです。
個人の仕事や努力が結果となって表れやすい
弁理士の仕事は様々な条件の依頼を、どのように処理し、どのように権利化まで進めるかしっかりと戦略をたて、時間をかける必要があります。
例えば、「特許申請の範囲」を定めた書類を提出する場合、欲張って範囲を広くするとその発明の独自性は認められず、範囲を狭くすると、使える分野は限定され、権利として有効性がなくなります。弁理士の腕次第で結果が180度変わるということになります。
このように、弁理士個人が努力して得た知識や情報を使い、しっかりと戦略を練った成果が特許がどのように認可されたかとなって表れます。結果が白黒はっきりとわかれることはプレッシャーとなりますが、自分の実力が結果となるため、モチベーションややりがいにつながります。
今までの経験や知識を発揮できる
弁理士は法律以外の知識も必要とする職業です。外国出願する場合には語学力が必要になり、また、業務上では理系の専門知識も必要となります。
例えば、学生時代や前職などで培った語学の知識を使って、グローバルに活躍することができたり、顧客からのヒアリングの際に知識を発揮できるタイミングが多くなるのも弁理士の魅力です。
また、技術的な内容に触れる事が多いため、理系学部の出身者は特に弁理士として活躍できる場が多いとされています。機械系出身だったということが理由で、開発段階から仕事に携わることができた、という声もあるようです。
弁理士になってからも、様々な分野で勉強を続け、新たな分野を習得をしたり、自分の得意分野を広げることで習得した事柄を十分発揮できる仕事であると言えます。
経験をつめば年収1000万も可能になる
弁理士資格者の平均年収は700万程と言われています。日本の一般的な平均年収である約420万と比較すると、弁理士の年収は高いと言えます。
特許事務所での年収相場は700万~5000万だそうです。所属する企業の規模や担当する案件によって大きく差がありますが、未経験でも年収は450万程度と高収入を得ることができる職業です。業績が良い事務所であれば1年目から500万~600万も可能です。
独立開業し、順調に仕事をこなしていくこと、また、様々な案件をこなすことや、弁理士としてしっかりと経験をつむことで、年収1000万以上稼ぐことも可能な業界です。
このように自分の努力や経験次第で年収にも反映させることができるのは、弁理士の大きな魅力と言えるのではないでしょうか。
弁理士の年収については「弁理士の年収って?中央値や分布をチェックして現実の年収をチェック!」で詳しく紹介しています。
弁理士は知的財産権の専門家!コツコツ努力することが好きな人にオススメ!
これから弁理士の資格に挑戦する方、弁理士として働いてみようと検討中の方、そして、弁理士になりたいと勉強中に方にも、詳しく見ていくことができたのではないでしょうか。
知的財産に関する世界にも影響を与える可能性のあるとてもやりがいのある仕事内容でした。
これまでの内容をまとめてみましょう。
- 弁理士は知的財産権に関わる仕事である
- 特許事務所・企業・独立開業の働き方がある
- 新しいことが好きで好奇心がある、一人でコツコツ作業する人に向いている
- 弁理士の魅力はこれまでの経験や知識を発揮でき、努力次第で高年収も目指せる
弁理士は知的財産権の保護や活用のサポートをする国家資格を有する職業です。幅広い分野での専門知識や経験を必要とし、誰でも簡単に就くことができる業種とは言えません。独立開業や収入面では、時間もかかりますし経験を積むまでは大変な仕事と言えるでしょう。
しかし、常に新しい事柄に触れることができ、自分の動きが世界の動きに影響する可能もある仕事であり、個人の努力次第で高収入を目指すことも可能な、とてもやりがいのある仕事とも言えます。
時間はかかりますが、一人で完結することも多いため、コツコツ一人で作業することが好きな人にはおすすめの職業です。もし、これから資格の取得を考えている方、今後弁理士としての活躍を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
弁理士試験に合格するための勉強方法は「弁理士試験に合格する勉強方法は?勉強を始める前に知っておくべきことを解説!」で詳しく紹介しています。
弁理士試験の合格率は「弁理士試験の合格率は?統計から読み解く弁理士の難易度と合格の方法!」で詳しく紹介しています。