「弁理士になりたいが何から始めればいい?」
「弁理士試験に合格できる勉強方法って何?」
このような疑問は弁理士を目指そうと思われた皆様が持つものだと思います。
弁理士は知的財産に関する専門家であり、弁理士になるためには国家資格である弁理士資格を取得する必要があります。
効率よく確実に弁理士試験に合格するためにも勉強を始める前には、まず敵を知ることが大切です。弁理士試験とはどのようなものかを知り、より良い勉強方法を理解していく必要があります。
こちらの記事では弁理士試験の対策について、以下の内容を解説します。
- 弁理士試験の出題範囲と内容について
- 弁理士試験の難易度は?独学でも合格できる?
- 各試験ごとの対策とは
- 勉強する上で注意すべきポイント
ぜひ参考にしてみてください。
コンテンツ
弁理士試験は3つある!各出題範囲と内容とは?
- 短答式試験
- 論文式試験
- 口述試験
弁理士試験には短答式試験・論文式試験・口述試験の3つがあり、短答式に合格しなければ論文式を受験することはできません。また、論文式に合格しなければ口述試験は受験できない仕組みとなっています。
試験科目は①特許法、②実用新案法、③意匠法、④商標法、⑤条約、⑥不正競争防止法、⑦著作権法、⑧選択科目の8科目です。中でも①〜④の法律科目は3つの試験に共通して出題される科目であり、産業財産権四法と呼ばれ弁理士試験突破の鍵となっています。
では実際にどのような試験内容になっているのか細かく見ていきましょう。
短答式試験:マークシートによる五肢択一式
まず一つ目に受けることになるのが短答式試験です。
こちらはマークシート形式で五つの選択肢の中から一つの正解を選びます。
この試験では条例などの幅広い知識とその理解力を判定することを目的として行われます。
出題範囲 | 出題数 |
①特許法,②実用新案 | 20題 |
③意匠法 | 10題 |
④商標法 | 10題 |
⑤条約 | 10題 |
⑥不正競争防止法,⑦著作権法 | 10題 |
出題数は全60題です。短答式試験では幅広い知識が問われるため、試験範囲が非常に広くなっています。
論文試験:論述式
二つ目に受けるのは論文試験です。3つの試験の中でも最難関と言われているのがこちらです。
工業所有権に関する法令についての知識を問う【必須科目】と、技術や法律に関する知識を問う【選択科目】の2つがあります。
この試験では法律や事実に対して適切な理解力を持ち、論理的な思考能力・判断能力・問題解決能力が備わっているかを判断することを目的として行われます。
論述式で行われるので身につけた基本的知識を応用し表現する力・文章力も試されます。
出題範囲 | 試験時間 | |
①特許法,②実用新案法 | 2時間 | |
必須科目 | ③意匠法 | 1.5時間 |
④商標法 | 1.5時間 | |
選択科目 | ⑧選択科目 | 1.5時間 |
口述試験:試験官の質問に口頭で答える
最後の試験は口述試験です。
面接方式の試験となり、試験官の質問に対し口頭で回答しなければならないため瞬時に回答する力、そして知識だけでなくコミュニケーション能力も試されます。
出題範囲 | 試験時間 |
①特許法,②実用新案法 | 10分 |
③意匠法 | 10分 |
④商標法 | 10分 |
弁理士試験は独学でも受かる?データをもとに難易度を解説!
「あまりお金はかけたくないが独学でも合格できるだろうか?」
「予備校や通信講座を活用するべきなのか?」
「そもそも弁理士試験ってどれくらい難しいのだろう?」
結論から言うと、独学で弁理士に合格することは可能です。しかし至難の業であるのが現実です。
実際、弁理士試験合格にかかる平均受験回数は4〜5回です。一年で合格することは初学者では不可能と言っても過言ではありません。
このように弁理士試験はどれくらいの難易度かを知り、自分ならどのくらいの時間を要し、どの程度の勉強が必要なのか、独学でも問題ないかを考え最適な勉強方法を見つけましょう。
弁理士試験の難易度は非常に高い!
弁理士試験は毎年合格率が10%を割る狭き門です。
これは国家資格の中でも司法試験や税理士試験などと並ぶ超難関と言えるでしょう。実際に近年の合格率を見てもその難しさが窺い知れます。
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
2018年(平成30年) | 3,587人 | 260人 | 7.2% |
2019年(令和元年) | 3,488人 | 284人 | 8.1% |
2020年(令和2年) | 2,947人 | 287人 | 9.7% |
2021年(令和3年) | 3,248人 | 199人 | 6.1% |
また、弁理士試験の合格に必要な勉強時間は平均3,000時間と言われています。毎日3時間勉強し大体2年半(初学者は2〜3年)ほどかかる計算です。
弁理士試験の合格率については「弁理士試験の合格率は?統計から読み解く弁理士の難易度と合格の方法!」で詳しく紹介しています。
基本は予備校や通信講座がおすすめ!
基本的に弁理士を目指すのであれば受験予備校や通信講座を受けるのがおすすめです。弁理士試験では法律用語を理解する必要があり、法律の勉強が未経験の方にはハードルの高い作業になります。
また、論文に関しては自分だけでは答案が正しいのかどうかの判断が難しいです。そのため、いつでも疑問点を質問できたり、第三者に答案を確認してもらえる環境は試験合格に向けて大切になります。
今ではオンライン講座というものもあり、スマホを使って隙間時間を利用し勉強でき受講料も安価なものが多いので忙しくてお金をあまりかけられない方にはおすすめです。
弁理士の予備校に関しては「弁理士試験の対策を徹底解説!独学の方法やオススメ講座も紹介!」で詳しく説明しています。「どの予備校がいいのか分からない」と悩まれている方は是非参考にしてみてください。
各試験ごとの対策とは?
弁理士試験がいかに難しい試験であるか理解できたところで、今度は各試験ごとの対策を解説します。
各試験の目的を知り、一つ一つしっかり対策していきましょう。
短答式試験:条文などを理解することから始める
ポイントとしては以下の3つが挙げられます。
- 条文などを理解する
- すぐに過去問を解き始める
- 過去問を研究する
条文などを理解する
短答式試験では条文など基本的知識をいかに理解できているかが大切になってきます。そのためまずは基本的知識を理解することから始めましょう。
しかし条文は難しい用語もたくさん出てきますし、出題範囲も広いとなると全てを丸暗記するのは至難の業でしょう。そこでまずはテキストなどを一通り読んで全体を理解していきましょう。そうすることで段々と用語にも慣れ覚えられるようになってきます。
すぐに過去問を解き始める
条文など基本的知識をある程度理解できたら、すぐに過去問に取り掛かりましょう。初めは分からなくても間違えても気にしなくて大丈夫です。答えを見てどんどん解き進めていきましょう。
ここで大切なのが間違えた問題を短答式試験用のテキストやノート、四法対照法文集などに書き込み、まとめていくことです。こうして間違えた問題を一元化していきましょう。
全ての判断は条文を根拠としているので法文集などを開き条文に立ち返りながら理解を深め再度問題にチャレンジしましょう。これを繰り返しすべての問題に正解できるように対策していきます。
過去問を研究する
過去問は実際に過去に出題された問題=試験の傾向と必勝法を知るツールになります。もちろん過去問を解くことで自分の得意不得意を理解し対策していくことも大切ですが、それと同時に過去問を研究し分析してみてください。
どういった問題が頻出なのか、難易度はどれくらいか、などを研究し何を最優先に勉強し落とさないよう確実にしていくかなどを考え自分なりの必勝法を見つけていきましょう。
論文式試験:出題パターンによって型を身に着ける
最難関と言われる論文式試験ですが、実は攻略法があります。
それが出題パターンによって型を身に着ける方法です。
論文式試験では採点者により採点の不平等が起こらないよう、採点基準が設けられています。
つまり、「このことを書けば得点になる」と言うことが決まっているのです。そのため短答式試験に向けて備えた基本的知識と思考力・判断力に合わせて、パターンを知ることが必勝法となってきます。
ここでもぜひ過去問を研究し、出題パターンに対応できる力を身につけていきましょう。
口述試験:周囲の人に模擬テストをしてもらう
ここまで到達できた方は難関の論文試験も突破し、知識に関しては十分備わっている状態だと思われます。
口述試験に向けてさらに、試験官の質問に対し瞬時に応える対応力とコミュニケーション力を鍛えていきましょう。
勉強方法としては受験生仲間など周囲の人に模擬テストをしてもらうことがいい対策になります。
また、予備校などでは口述試験に向けた模擬試験を行っているところもあり、かなり実践的で力になりますので、ぜひチャレンジしてみましょう。
弁理士試験の詳しい対策については「弁理士試験の対策を徹底解説!独学の方法やオススメ講座も紹介!」で紹介しています。
弁理士試験の勉強をするうえで注意するべきポイント3選!
弁理士試験の勉強をする上で注意すべきポイントは3つあります。
- 合格まで数年かかることを前提として勉強を始める
- なるべく予備校のテキストを利用する
- 【独学で勉強する場合】論文試験や口述試験の対策が難しい
ではそれぞれ詳しく解説していきます。
合格まで数年かかることを前提として勉強を始める
先にお話しした通り弁理士試験合格にかかる勉強時間は平均3,000時間と言われています。また、合格者の平均受験回数が4〜5回ということを見ても最低でも2〜3年はかかることを想定しなくてはなりません。
そこで大切なのが、目標から逆算した大まかな勉強スケジュールを立てることです。
むやみやたらに勉強していると、気づいた時には「試験まであと一ヶ月で全然間に合わない!」ということになりかねません。いつまでに取得したいか考え自分のペースにあったスケジュールを組みましょう。またその際、余裕のあるスケジュールを組むよう注意しましょう。
なるべく予備校のテキストを利用する
テキストはなるべく予備校のテキストを利用するようにしましょう。
予備校のテキストであれば試験に必要な内容が全て確実に含まれていますので安心です。
独学で学ぶ場合も、中古でも予備校のテキストを入手することをおすすめします。
【独学で勉強する場合】論文試験や口述試験の対策が難しい
独学では論文試験や口述試験の対策が難しくなります。
短答式試験では答えが一つに決まっていますが、論文式試験や口述試験では自分の回答が本当にあっているのかどうか判断できません。
そのため自分で客観的に添削できなければならず難易度はとても上がり、初学者ではほぼ不可能です。もし独学で勉強したいと考えているのであればこう言ったことも考慮しなくてはなりません。
実際、独学には向いている人・注意点がそれぞれあるのでしっかりと理解した上で挑みましょう。
〈 独学に向いている人 〉
・法律の知識をある程度有する方
・周りに合格者がいて、相談できる環境がある方
・計画的に勉強ができる方
・難関大学や難関試験に合格したことがある方
〈 注意点 〉
・法改正情報に気を配る
・モチベーションをキープする
弁理士になるには自分に合った勉強方法を見つけ、毎日インプットとアウトプットを繰り返そう!
ここまで、弁理士試験の内容や対策・勉強方法について解説してきました。
それではまとめて確認しましょう。
- 弁理士試験は短答式試験・論文式試験・口述試験の3つがある
- 弁理士試験は合格率10%を割る超難関
- 短答式試験対策では条文を理解することから始める
- 論文式試験対策では出題パターンにより型を身につける
- 口述試験対策では周囲の人に模擬テストをしてもらう
- 合格には最低でも2~3年かかる
- 独学合格も可能だが非常に難しい
- 基本は予備校や通信講座がおすすめ
試験の基本的知識、勉強方法を理解し、自分にとって最適な勉強方法を見つけましょう。
また、隙間時間を活用し毎日少しの時間でも勉強に触れることが大切です。さらにインプット・アウトプットを繰り返し合格に向け確実に力を身につけていきましょう。