「宅建士の仕事ってどんなことをするの?」
「宅建士の資格を取得すれば就職でどれくらい有利になるの?」
宅建士の資格に興味を持っている人は、このような疑問を持っているのではないでしょうか。宅建士の試験勉強でも業務内容に少し触れる部分がありますが、具体的にもっと知りたいと思います。
この記事では、宅建士を取得することでできる仕事や求められるスキル、就職までの流れなどを詳しく紹介していきます。宅建士の資格を生かしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
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宅建士とはどんな資格?正式名称は宅地建物取引士
宅建士は正式には「宅地建物取引士」と呼ばれ、毎年20万人ほどが受験する最大規模の国家資格です。不動産は男性の仕事というイメージを持っている人がいると思いますが、女性の数が増えてきています。そのため、宅建士は女性にも人気が出てきている資格です。
不動産の取引は大きなお金が動きますので、不当な契約を結んでしまうと莫大な損害を被ってしまいます。そのようなことが起こらないように、不動産に知識がない人に不動産取引に関する重要な事項を説明する必要があります。宅建士はその役割を担っているのです。
試験は毎年10月に1度だけ行われ、合格率は15%程度と難関です。独学での合格は難しいので、資格取得のノウハウを知っている予備校や通信講座を利用する人が多いといえます。
なお、不動産業界では従業員の5人に1人以上の宅建士を置かなければならないと法律で定められています。そのため、不動産会社で働いている人の多くが目指す資格です。
宅建士の仕事内容は?不動産取引時の3つの役割
不動産取引の営業は資格がなくてもできますが、宅建士にしかできない仕事が3つあります。
ここでは宅建士にしかできない3つの仕事・役割について紹介していきます。
①取引内容の説明
宅建士に最も求められる仕事が、不動産取引に関する内容の説明です。
不動産の契約書には専門用語が散りばめられていて、普段見聞きしない言葉がたくさん使われています。一般の人は不動産に関する専門的な知識を持っていないので、じっくり読んでも権利関係や条件などが理解できない場合があります。
契約書を正確に理解してもらうために、宅建士は契約を締結する前に重要な事項を中心に取引内容の説明をするのです。専門知識を持ったプロが間に入って説明をすることで、不動産取引に不慣れな一般の人を守れるようにできます。もちろん、安心して取引をできるようにもなるでしょう。
取引内容の説明くらいなら資格がない営業者でもできるのではと思うかもしれません。しかし、重要事項の説明は宅地建物取引士証を提示することが義務付けられているので、売買契約・賃貸契約を問わず必ず宅建士が行います。
②重要事項説明書の交付や記名押印
不動産取引の重要事項はかなり多岐にわたるので、口頭だけで理解できるものではありません。例えば、不動産の表示や道路の種類・制限、水道などのインフラ、手付金、瑕疵担保責任などです。
どれも対象物件にとって大切な部分ですので、専門的な知識を持っている宅建士が重要事項説明書を作成して交付しなければなりません。そうして不動産取引を進めるにあたって、間違いがないようにするのです。
特に重要なのが、重要事項説明書への宅建士の記名押印です。記名と押印があることで、宅建士が「重要事項説明書を作成して交付したこと」と「記載事項に間違いがない」ということの証明となります。
プロである宅建士が重要事項説明書の交付と記名押印することは、不動産取引を公正で誠実なものにするための重要なプロセスといえるでしょう。
③契約書の交付や記名押印
不動産取引に関する重要なポイントを理解して納得してもらえれば、契約書の交付を行います。契約書には売買代金や代金の支払い時期、引き渡し、瑕疵があった場合の対応などの取り決めが書かれています。
重要事項説明書と同様に大切な部分ですので、宅建士が内容を確認してから交付し、記名押印することで契約書を保証するのです。
宅建士のより具体的な仕事内容!求められるスキルは大きく3つ
宅建士の重要な役割を説明してきましたが、それを完結するためには大きく以下の3つのスキルが求められます。
- 慎重さ
- 語彙力
- 向上心
宅建士が関わる仕事は、重要事項説明書や契約書の交付や説明で、誤りや間違いがあってはいけません。そのため、丁寧に物件を調査したり書類を1つ1つ慎重に確認したりするスキルが求められます。
また、不動産取引では専門用語が多用されるので、それを一般の人にもわかりやすい言葉で伝えられる語彙力も持っていなければなりません。難しい言葉をいかに簡単な言葉に言い換えられるかが、宅建士の力の見せ所といえるでしょう。
さらに、不動産取引では不動産登記法や借地借家法、宅地建物取引業法、建築基準法、民法など、さまざまな法律が関わってきます。宅建士の試験では学ばなかった領域の知識も身に着けていかなければなりません。法律は改正されることもあるので、宅建士は学び続ける向上心が必要です。
宅建士の就職先は?2つの業界で特に有利!
宅建士の資格を取得できれば、どのような就職先があるのか気になるでしょう。結論からいって「不動産業界」と「建築業界」の2つは宅建の資格を有利に生かせます。
不動産業界には売買や仲介、管理などさまざまな形態がありますが、不動産を管理しながら賃貸募集など幅広く事業を展開している会社は多いです。不動産の売買や仲介を事業展開するには宅建士の資格が必須なので、就職先として最有力といえるでしょう。
ゼネコンやハウスメーカーなどの建築業界でも宅建士の資格は重宝されます。建築会社の中には、単に建物を建てるだけでなく自社で販売するところが増えてきています。自社の建物であったとしても、一般の人に販売する場合には建物に関する説明をしっかりと行わなければなりません。つまり、宅建士が求められるのです。
年収はどれくらい?平均約300~500万円
気になる宅建士の年収は、平均すると300〜500万円程度です。令和2年の全業種平均が433万円でしたので、平均レベルといえるでしょう。
ただし、宅建士の収入は会社の規模や地域、資格手当の量、固定給か歩合制かなどによって全く違ってきます。例えば、不動産の動きが激しい都市部であれば、歩合で給料が増額されることが考えられます。
また、都市部であったとしても、フルコミッションであれば給料は成績次第です。全体の平均はありますが、宅建士はさまざまな条件で年収が大きく増えたり減ったりすると考えてください。
なお、会社によっては資格の有無が昇進や昇給に影響を与える場合があります。長く1つの会社に勤めようと考えている人は、宅建の資格で生涯年収が大きく左右されます。不動産業界で仕事をするなら、資格取得を目指しましょう。
宅建士資格取得後は?登録から就職までの流れを解説!
宅建の試験に合格したとしても、すぐに宅建士として仕事ができるわけではありません。実は、宅建士として仕事をするためには、資格登録要件をクリアして登録・宅建士証の交付を受ける必要があるのです。
ここでは宅建士として登録する方法から就職して仕事をするまでの流れを解説していきます。
宅建士の登録方法は?条件を満たして申請しよう!
試験に合格した後、登録をするための条件は以下の2つです。
- 宅地建物取引の実務経験が2年以上ある
- 国土交通大臣の登録を受けた宅地または建物の取引に関する実務の講習を修了した
どちらかをクリアしていれば、申請をすることで原則登録して宅建士証を発行してもらうことができます。
なお、以下のような欠格要件に該当する人は、上記の条件をクリアしていても登録できません。
- 破産手続き開始の決定を受けてから、復権できていない
- 禁固刑や懲役刑を受けて刑の執行後5年を経過していない
- 宅建業法や暴力的犯罪で罰金以上の刑を受けてから5年を経過していない
- かけこみ廃業を届け出てから5年を経過していない
- 暴力団またはその関係者でなくなって5年を経過していない
欠格要件に該当しない人は、都道府県の窓口で登録手続きを進めていきます。実は、登録にはいくつもの必要書類があるので、1つずつ確認して集めるようにしましょう。必要書類とは以下の9点です。
- 記名押印した登録申請書
- 記名押印した欠格要件に該当しない誓約書
- 身分証明書
- 登記されていないことの証明書
- 住民票
- 実務経験または登録実務講習の証明書
- 合格証書のコピー
- 顔写真(縦3cm×横2.4cmのカラー写真)
- 登録手数料37,000円
これらすべてを無事提出できれば、通常1~2ヶ月で登録が完了して「登録通知書」が届きます。ただし、登録が完了しただけでは宅建士として仕事をできず、宅建士証の交付を申請しなければなりません。宅建試験合格1年以内であれば、以下の5つの書類を提出する事で申請ができます。
- 登録通知書
- 宅地建物取引士証交付申請書
- 顔写真(縦3cm×横2.4cmのカラー写真)
- 印鑑
- 交付手数料4,500円
しかし、試験合格から1年を経過している場合は、都道府県指定の法定講習の修了が必要です。これを受ければ、宅建士証の申請が可能になります。申請する都道府県によって違いますが、通常は申請してから約2週間程度で宅建士証が交付されます。
宅建士の就職は?求人サイトなどをチェック!
宅建士の資格を持っていれば、男性・女性に関係なく就職に有利です。
宅建士の仕事である「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名・押印」「契約書への記名・押印」の3つは独占業務です。また、不動産業界では従業員の5人に1人以上の宅建士を置かなければならない決まりがあります。つまり、不動産業界では宅建士は常に求められているので、就職はしやすいといえるでしょう。
人口の減少は不動産需要の減少に影響を与えます。しかし、不動産取引自体がなくなることはなく、都市開発など地域によっては活発に取引がされる場所も考えられます。その際、宅建士の存在は欠かせません。そのため、将来にわたって宅建士の需要は高く、就職できないことはないでしょう。
もちろん、現在も宅建士を求めている会社や人は全国にたくさんいます。どれくらいの需要があるのか気になる人は、求人サイトなどをチェックしてみてください。
宅建士の仕事内容は大きく3つ!資格の専門性が生かせる!
宅建士の仕事といえば「重要事項の説明」「重要事項説明書への記名・押印」「契約書への記名・押印」の3つです。これらは宅建士にしかできず、独占業務とされています。この3つの仕事によって、不動産に知識がない一般の人が不当な契約を結んでしまうのを防いでいるのです。
そのため、宅建士は常に不動産に関する専門知識を学び続けることが必要です。しかし、その高い専門性から、さまざまな会社や人から求められています。自分の身に着けた専門知識を生かしたいという人は、ぜひ宅建士を目指してみてはいかがでしょうか。