家やビルなどの建物を建築するときには、どのような建物を建てるのかという設計図が必ず必要になります。
設計図が必要な理由は建物の中の外観や内装、部屋の配置だけではありません。法律に基づいた構造であることや、防災などさまざまな事柄を踏まえたうえで設計図を作成します。
その仕事をするのが建築士です。建築士は設計だけでなく現場監督も行う建築のプロフェショナルと言っても過言ではない職業になります。
建築士には1級、2級、木造といった種類があり、それぞれ設計できる範囲が異なるだけでなります。また、受験するための資格も異なるため、よく調べてから受験対策を行うことがとても重要です。
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建築士の1級と2級の違いは?資格を管理する団体も違う!
では具体的に建築士1級と建築士2級では何がどのように違うのでしょうか。ここでは以下のように各級の特徴について確認してみましょう。
- 建築士1級の特徴は?建築・設計する建物に制限がない
- 建築士2級の特徴は?1級よりは取得が簡単
建築士1級の特徴は?建築・設計する建物に制限がない
建築士1級は国土交通省から認可されている国家資格です。建築士1級の大きな特徴は「設計する建物の大きさに制限がない」ことにあります。要するに一般住宅でも大きなビルでもどんなものであっても設計できるのです。
建築士1級の受験をするためには以下の条件のうちのいずれかに当てはまらなくてはいけません。
- 大学などで指定科目を修めて卒業している
- 建築士2級資格を取得している
- 建築設備士を取得している
しかし、試験に合格したとしても実際に実務経験が2~4年無ければ免許の登録はできません。実務経験の年数は最終学歴などによって異なります。
- 4年制大学…実務経験2年以上
- 3年制短期大学…実務経験3年以上
- 2年制短期大学…実務経験4年以上
- 建築士2級を取得している…2級建築士として実務経験4年以上
- 建築設備士…建築設備士として実務経験4年以上
建築士1級の試験は仕事の幅が広い分出題範囲が広く、難易度も高いものとなっています。
建築士2級の特徴は?1級よりは取得が簡単
建築士2級は各都道府県から免許が交付される国家資格になります。1級建築士とは異なり、設計できる建物の大きさに制限があります。
- 木造建築物の場合…高さ13m軒高9m延べ面積1000㎡まで
- 鉄骨造建築物の場合…高さ13m軒高9m延べ面積300㎡まで
数値で見るとわかりにくいかも知れませんが、3階建て程度の一般住宅までの設計ができるということになります。
建築士2級の受験をするためには以下の条件のいずれかに当てはまることが必要です。
- 大学などで指定科目を修めて卒業している
- 建築設備士を取得している
- 建築に関する実務経験が7年以上
また、建築士1級同様に以下の条件に当てはまる人は資格試験合格後に実務経験が必要になります。大学や短期大学、高等専門学校の卒業者に関しては実務経験がなくとも免許を取得できます。
- 高校卒業、中学校卒業…実務経験2年以上
- 実務経験が7年以上…実務経験7年以上
建築士2級の試験内容は国家資格の試験の中でも難しい試験ではありますが、基本をきちんと理解できれば合格することができます。試験対策では応用力を身に付けることが重要です。
建築士試験の合格率は?推移を級別にチェック!
建築士の資格を取得しようと考えたときに多くの方は合格率が気になるのではないでしょうか。建築士の試験内容はマークシート形式の学科試験と設計製図試験の2つで行われ、それぞれ合格率が違っています。そこでここでは各級の合格率について以下のようにご紹介します。
- 建築士1級の合格率は?合格率約10パーセント
- 建築士2級の合格率は?合格率約40パーセント
建築士1級の合格率は?合格率約10パーセント
建築士1級の合格率の推移は以下のようになっています。
年度 | 製図合格率 | 学科合格率 | 総合合格率 |
---|---|---|---|
平成25年 | 40.8 | 19.0 | 12.7 |
平成26年 | 40.4 | 18.3 | 12.6 |
平成27年 | 40.5 | 18.6 | 12.4 |
平成28年 | 42.4 | 16.1 | 12.0 |
平成29年 | 37.7 | 18.4 | 10.8 |
平成30年 | 41.4 | 18.3 | 12.5 |
令和元年 | 10月:36.6 12月:34.2 | 22.8 | 12.0 |
令和2年 | 34.4 | 20.7 | 10.6 |
令和3年 | 35.9 | 15.2 | 9.9 |
建築士1級の学科試験の平均合格率は約19%の難易度の高い試験です。出題範囲も広く問題内容も多岐にわたるので、合格するのは簡単ではありません。
学科試験は各科目で52~55%以上総合得点で72%以上という基準点以上を取らなければ合格できません。例えば総合得点が良くても1つの科目の基準点が満たない場合は不合格になってしまうのです。
設計製図試験の合格率は約37%で学科試験と比べると合格率が高いのが特徴です。学科試験に合格していれば設計製図試験で落ちてしまっても、翌年から4年間のうち2回分は免除となります。そのため、設計製図について学習する時間を長くとることが可能です。
建築士1級の総合合格率は10%ほどしかない難しい試験です。まずは学科試験にパスすることを考えて勉強をするようにしましょう。
建築士一級の学科試験内容は以下の5科目があり、毎年7月ごろに行われます。
- 建築計画(学科Ⅰ)…20問
- 建築環境・設備(学科Ⅱ)…20問
- 建築法規(学科Ⅲ)…30問
- 建築構造(学科Ⅳ)…30問
- 建築施工(学科Ⅴ)…25問
設計製図試験は10月ごろ行われ、課題は学科試験が終了した後日に発表されます。
建築士2級の合格率は?合格率約40パーセント
建築士2級の学科試験内容は以下の4科目があり、毎年7月ごろに行われます。
- 建築計画(学科Ⅰ)…25問
- 建築法規(学科Ⅱ)…25問
- 建築構造(学科Ⅲ)…25問
- 建築施工(学科Ⅳ)…25問
建築士2級の学科試験の合格率は約40%となっていますが、建築士2級の試験も各科目で13点以上、総合点で60点以上を取らなければ合格できません。
過去に出題された問題と似ている問題が出題されることが多いため過去問題を何度も解き、基本をしっかり理解しておくことがとても重要です。
設計製図試験は9月ごろ行われ、課題は学科試験前に発表されます。
設計製図試験の合格率は約51%で学科試験よりも合格率が高くなっています。何度も設計製図をして、ミスのない回答をすることが重要です。
受験者の属性別合格率は?大学・専門学校別にチェック!
公益法人建築技術教育普及センターでは合格率や試験合格者の属性などが発表されています。ここでは令和3年度の合格者の属性を確認してみましょう。
建築士1級の属性別合格率
令和3年の学科試験に合格した4,832人の属性別合格率は以下のようになっています。
- 学歴・資格別
- ・大学卒…70.4%
・2級建築士…18.1%
・専修学校卒…5.1%
・建築設備士…1.7%
・その他…4.7%
- 年齢別
- ・23歳以下…14.7%
・24~26歳…30.2%
・27~29歳…15.5%
・30~34歳…15.2%
・35~39歳…10.0%
・40歳以上…14.4%
- 男女別
- ・男性…72.7%
・女性…27.3%
上記のように1級建築士の学科試験を合格する方には、大学卒業が多く、年齢的にも大学卒業してすぐの方が多いようです。また、男性が圧倒的多数を占めているのも特徴の1つと言えます。
専門学校卒業者や女性の方は少ないことが分かります。
建築士2級の属性別合格率
令和3年の学科試験に合格した8,219人の属性別合格率は以下のようになっています。
- 学歴・資格別
- ・学歴のみ…82.7%
・学歴と実務経験あり…2.4%
・実務経験のみ…14.4%
・建築設備士…0.5%
- 年齢別
- ・24歳以下…61.8%
・25~29歳…10.5%
・30歳代…14.7%
・40歳代…9.7%
・50歳以上…3.3%
- 男女別
- ・男性…67.2%
・女性…32.8%
こちらも建築士1級同様に学校を卒業し、その後すぐ資格を取得された方が多いようです。また、女性の合格率が1級よりもやや高いのも特徴と言えます。
建築士は他の試験と比べて難しい?類似試験と比較!
建築士の資格試験は難しいと言われ、特に建築士1級は出題範囲も広く、合格するための基準も高いため合格率が10%ほどです。建設系の似たような国家資格に「建築整備士」と「一級建築施工管理技士」があります。
この2つの国家資格資格と建築士1級の合格率は以下のようになっています。
- 建築整備士…約18%
- 一級建築施工管理技士…約18%
- 建築士1級…約10%
このように見比べてみると建築士の資格を取得するのはとても難しいことがよくわかります。
建築士の合格率が高いスクールは?TACや日建学院など有名どころを比較!
建築士を合格するために、通信教育を受講する方も多くいらっしゃいます。現在は多くの資格スクールが建築士の講座を開設しています。ここでは数多い資格スクールの中で特に有名な2社の比較をするので、建築士の勉強に通信教育を考えている方はぜひ参考になさってください。
日建学院
日建学院は1996年に創業した老舗の資格スクールです。こちらでは質の高い映像授業とオリジナルの教材を使うことで多くの合格者を輩出しています。スクーリングサポートやメール、FAXで質問を受けつけているなどサポート体制も充実しているのが特徴です。
- おすすめコース
- ・集中ゼミWebコース…約9~11か月(1級2級 100,000円 )学科と製図の一環教育
・学科スーパーコース…約10か月(1級 790,000円、2級 620,000円)学科に特化したプレミアムコース
TAC
TACは多くの資格講座を展開している有名資格スクールです。通信教育だけでなく、教室通学やビデオブース講座など多彩な受講方法が用意されています。
社会人や学生など忙しい方でもスマートフォンを使って学習することができるのも特徴の1つです。学科と設計製図のコースが分かれているため注意してください。
- おすすめコース
- ・学科本科生…1級 全56回 2級 全48回(1級 370,000円 2級 240,000円~)学科に特化したスタンダードコース
・設計製図本科生…1級 全10回 2級 全8回(1級 200,000円~ 2級 150,000円~)学科に特化したスタンダードコース
建築士の合格率は1級が低い!しっかり対策して臨もう!
建築士は国家資格の中でも難易度の高い資格です。建築士2級であっても40%ほど、建築士1級の合格率は10%ほどの難関資格と言えます。学科だけでなく設計製図もあるなど試験内容の出題範囲も広くなっているので、まずは学科の試験対策をしっかり行うようにしましょう。
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