保険や金融に関わり商品開発やコンサルティングのプロとして活躍するアクチュアリーについて見ていきます。
生命保険や年金に関して人生の中で一度も考えたことのない方は、あまりいないのではないでしょうか?
自分にもしものときがあった場合、事故や病気の保証などお金の肩代わりをしてくれる保険は、人々の安心な生活に大切な役割を担うといえるでしょう。
この記事では、アクチュアリー資格とは何か。試験の概要や難易度、勉強方法などを解説していきます。
- 生命保険や損害保険の知識に詳しくなれる
- 金融の知識が身につくため、社会に深く関われる実感が持てる
- 自分の家族や友人に保険に関するサポートやアドバイスができる
- 資格を取得すれば、金融分野で活躍する他の同僚と比べて肩書きとして差別化できる
- アクチュアリーとしてのキャリアプランを通して夢を実現させられる
- 年収アップを含めてスキルアップの転職が目指せる可能性
など、アクチュアリーの資格取得で考えられるメリットの一例をあげてみました。
保険や年金は、専門家以外は身近ではあるものの仕組みが複雑でわかりづらいことも多いものです。
人々の助けになれる仕事であることに違いはないため、興味や関心を持たれている方はぜひ記事を一読してみてくださいね。
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アクチュアリーとは?
生きるために必要なお金について数字の観点からプロの知識を使い、生命保険などの商品設計に携わる仕事がアクチュアリーです。
保険や年金など人々が生活していく中で、金融に関する問題は避けられません。アクチュアリーは人々の将来設計を支える大切な役割を担うのです。
資格としては、100年以上の運営実績がある公益財団法人日本アクチュアリー会が実施。
一般的には日本アクチュアリー会の試験に合格して正会員に認められると、資格保有者としてアクチュアリーを名乗って仕事ができます。
2020年10月現在、アクチュアリーの資格保有者は国内に5,000人。銀行や国の機関などで働き社会に大きく貢献しているのです。
元はイギリスで始まった概念の一つでもあり、アクチュアリーが生命保険の概念を作ったといわれています。
統計学や確率などの知識を使って保険の概念が組み立てられているため、専門家として設計者の高い能力が感じられますね。
アクチュアリーは顧客一人ひとりの立場に寄り添い、顧客に必要な保険や年金などの設計を立てていきます。
責任感が伴う仕事ではあるものの、自分が設計した保険商品が顧客に直接役立つやりがいを感じられる内容ともいえるでしょう。
アクチュアリーを名乗るには?
アクチュアリーは資格が必須の仕事ではありません。
ただ、日本でアクチュアリーを名乗って活動する場合、大半の方はアクチュアリー会の資格保有者が仕事を担っています。
資格試験に合格すればアクチュアリーの知識と技術の証明と自信につながり、信頼の元アクチュアリーを名乗れるでしょう。
アクチュアリー資格取得の流れは?
資格取得を検討されている方は、おおまかに二つのステップを踏んでアクチュアリー試験の合格を目指していきます。
一つ目は、日本アクチュアリー会の準会員になることです。資格試験に申し込んで受験して5教科すべてに合格すると準会員になれます。
二つ目は、正会員になることです。まずは専門科目を選択で1分野受験して、二回目の試験申し込みを済ませます。2つの専門科目に合格後、1日の研修を受けると晴れて正会員になれる流れです。
2020年度現在、アクチュアリーの会員費用として正会員は30,000円、準会員と研究会員は15,000円の年会費がかかります。
受験の際は合格後の費用も事前に用意しておきましょう。
アクチュアリーの活躍場所は?
主に保険や経済関係の業界で活動しているアクチュアリー。例えば生命保険や損害保険、年金やリスクマネジメントなどの分野で活動できます。
元はイギリスを起点に始まったアクチュアリーは国際にも関わる資格なので、将来的に海外で働きたい願望がある方にも相性がよいといえるのではないでしょうか?
就職先としては生命保険会社・損害保険会社・信託銀行など、金融に関わる場所で働けます。
アクチュアリーの仕事には、国の年金などと別に個人的な基金のサポートとしてコンサルや講師の仕事も実施。
アクチュアリーの資格は、社会人として就職しながら資格取得を目指す方も多いのです。
生命保険会社などに就職すれば直接知識を学びながらスキルアップも目指せるため、興味のある方はぜひ検討してみてくださいね。
アクチュアリー資格に向いている方
理数系など、数字が好きな方にはピッタリな職業といえるのではないでしょうか?
肩書きをつけるため、他の仕事仲間と別の観点からスキルアップを図りたい方にもアクチュアリーの資格取得はおすすめでしょう。
保険などの法律に関わる知識も必要なため、アクチュアリーの資格取得後も前向きに勉強を続けられる向上心のある方も向いている要素の一つといえます。
保険商品を開発する方、コンサルティング業務の講師としてアクチュアリーで活躍される方どちらにも人と関わるコミュニケーション能力は必須です。
「どのように保険の仕組みを伝えれば、より顧客に理解してもらえるのだろう?」
「仲間とうまく連携が取れるのだろう?」
という他人の視点に寄り添える能力も必要です。
保険や法律の分野はある程度勉強を重ねた方にしかわからない面も多いため、今後とも社会からさまざまな方の悩み解決に役立てる仕事内容といえるでしょう。
アクチュアリー資格の試験概要
例年アクチュアリーの試験は年に一回、大阪と東京で実施されています。東京会場はTOC五反田、大阪会場は天満研修センターで実施。
試験は例年12月中旬の3日間程度で、科目ごとに朝から夕方頃まで行われています。
一次試験と二次試験の筆記試験に分類されており、どちらの試験にも合格する必要があるのです。
試験に出題される問題には電卓が必要なため音声機能がついていないものなど、規定を守った電卓を持参して挑みます。
受験の申し込みは締め切りまでに済ませておきましょう。受験票は試験日の2~3週間前までには到着する流れです。
合格者の発表は例年2月中旬頃に実施されており、公式ホームページに合格者の番号が記載されます。
アクチュアリーの一次試験と二次試験内容や受験資格、合格難易度は以下の項目にまとめたので参考にしてみてくださいね。
アクチュアリーの一次試験と受験資格
例年12月に一次試験が行われており、受験資格として学校教育法に関わる大学を卒業していること。もう一つは、大学卒業や試験受験と同じレベルの学力を証明された方が対象です。
一次試験基礎科目の試験内容は、マークシート方式で「数学」「損保数理」「生保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」の5つにわけられています。
万が一すべての科目に合格できなかった場合は、未合格の科目を再受験する流れです。一次試験の合格基準は、各科目において満点の6割とされています。
アクチュアリーの二次試験と受験資格
例年12月に二次試験が行われており、受験資格として一次試験5つの科目にすべて合格した人で準会員になった方が受験できます。
二次試験専門科目の試験内容は「生保」「年金」「損保」コース3つの中から、各2科目ずつ設定されている1つのコース選ぶ形です。
生保コースは「生保1」と「生保2」
年金コースは「年金1」と「年金2」
損保コースは「損保1」と「損保2」
自分が受験したいコースを選んで各2科目に合格した後、プロフェッショナリズム研修を1日受講すれば晴れてアクチュアリーの正会員になれるのです。
二次試験の合格基準は、各科目において満点の6割とされています。
試験内容は論述式などの回答方式があり、それぞれアクチュアリーとして活動するための専門知識が備わっているかどうか、アクチュアリーとして実際の現場でどのくらい問題を解決する能力があるかを問われる構成。
万が一すべての科目に合格できなかった場合は、一次試験と同じく未合格の科目を再受験する流れです。
詳細に関しては公式のホームページを確認してみてください。
試験の合格難易度
アクチュアリーの資格は、民間資格の中でも難易度が高い試験内容です。
公式ホームページの解答によると、一般的にはアクチュアリーの準会員と正会員になるには平均で以下の年数がかかるといわれています。
準会員:約5年
正会員:約8年
難易度が高い理由には、各科目の合格率10~40%台の経緯があげられます。
保険や年金などの分野は専門性が高いため、合格率が低くなる傾向があるのです。
アクチュアリー試験合格に向けた勉強方法は?
公式テキストと推奨されているテキストの勉強も並行しながら、各分野と科目の理解を進めていきます。
日頃から新聞やニュースを参考にするなど、時事問題にも対応できるようにしておきましょう。
電卓で計算が必要な問題も出題されるため、日頃から慣れておくためにも対策しておきます。
アクチュアリーの資格を学生の頃から目指す方なら、理数系の大学がある学科を受験する方もおられるでしょう。
公式以外の企業では、アクチュアリー資格の試験対策として通信講座を開設しているところもあります。
社会人で各科目を受験して未合格で来年度の再受験を目指す方は、通信講座などもうまく活用して効率よく理解を進めるのも一つの手です。
数学の確率など、アクチュアリーに必要である基本的な専門知識について自分の理解度や過去の専攻分野を考えて対策に取り組んできましょう。
演習問題や専門用語の理解を進めながら、繰り返し内容を頭に入れていきます。知識の暗記も並行しながら、一年の計画を立てて試験勉強に取り組んでみてください。
公式テキストで試験勉強対策
日本アクチュアリー会が販売している公式テキストには、数学・生保数理・損保数理・年金数理それぞれの分野が販売しています。
数学の分野:モデリングの科目について『モデリング』『確率・統計・モデリング問題集』
生保数理の分野:『二見隆:生命保険数学(上巻・下巻)』
損保数理の分野:『損保数理』『モデリング』
年金数理:『年金数理』
以上の著書が販売されています。
公式テキストで販売されていない分野と科目に関しては、それぞれ試験勉強におすすめのテキストが記載。詳細は公式のホームページで確認してみてください。
会員専用の試験勉強対策講座も
例年約4~5か月をかけて、会員の方が受講できる講座が開催されています。基礎講座と特別講座にわけて実施。
基礎講座では、統計論や経済学などのアクチュアリーが知っておくべき基本的な知識を学びます。
特別講座は、基礎講座の受講を終えた方に向けた内容として人口論やリスクマネジメント論など、アクチュアリーに関する知識を更に深める勉強に取り組む流れです。
各講座には大学のように単位が設けられており、講師は大学の教授やアクチュアリーとして業界で働く方を迎えて行われています。
プロの専門家から講義で教えてもらえることは、アクチュアリー資格合格を目指す方々にとっても大きなモチベーションアップにつながるでしょう。
公式サイトで試験過去問・用語集が閲覧可
アクチュアリーの公式ホームページでは、過去に実施された試験問題が掲載されています。
「数学」「生保数理」「損保数理」「年金数理」「会計・経済・投資理論」
「生保1」「生保2」「損保1」「損保2」「年金1」「年金2」
以上各科目に関して、昭和37年度から最新の過去問まで多くの問題が掲載。
試験勉強でわからない用語が出てきたときは、公式ホームページの用語集でも確認が可能です。
自分用に印刷して手元に置くなど、できる範囲で過去問をうまく活用して対策に取り組んでおきましょう。
まとめ
アクチュアリー資格とは何か。試験の概要や難易度、勉強方法などを解説してきました。
生命保険や損害保険、年金やリスクマネジメントなどの分野で活動しているアクチュアリーは、普段はあまり聞きなれない資格かもしれません。
しかし、私たちの暮らしを保険や年金などの金融機関として、陰から支える大切な役割も担っていることがわかりました。
生活の糧になる保険や年金というサービスの裏では、アクチュアリーの資格保有者が活躍しているというわけですね。
アクチュアリーの資格は社会人として就職しながら取得を目指す方も多いでしょう。生命保険や年金など金融に関する知識に強くなるため、家族や友人など身近な人が困っているときのサポートもできます。
この記事を読まれている方には、上記のようなメリット以外にも何かしらの目標や向上心を持って未来を描いている方も多いのではないでしょうか?
理数系の知識に自信がある方や人の役に立つことが好きな方、金融業界で肩書きをつけてスキルアップを目指したい方など、ぜひアクチュアリー資格取得を検討してみてください。