結婚し子供ができてからも女性は外で働く傾向にあるため、保育園に子供を預けている人は多くいます。子供が元気な時は良いのですが、病気になってしまうと保育園に預けることはできません。多くの保育園では、熱が37.5度以上あると預けらない決まりをつくっています。
近隣に親兄弟が居ないなど、頼れるところがないが仕事には行かなければならないという時に助けになってくれるのが「病児保育士」です。ここでは、病児保育士の資格事情からメリット・デメリット、給与や求人の探し方など詳しく解説します。
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病児保育士に資格は必要なの?
病児保育士は入院までは必要としないが、通常の保育園に行くことが難しい子供を親に代わって看病しながら保育するのが仕事です。それでは、病児保育士になるには資格は必要なのでしょうか?
基本的に保育士か看護師の資格が必要
病児保育士は、病気によって保育園への登園が許可されない子供を看護し保育するのが仕事ですが、病児保育士になるのに必要な資格はありません。病児保育士として名乗れるような国家資格があるわけではありません。
病児保育士が働く場所は大きく分けて2つです。
・施設型
・訪問型
施設型は、病気の子供を預かる場所です。保育所や病院に併設されている場合もありますし、病児専門の施設もあります。保護者が病気の子供を連れていき預かってもらうシステムです。
もう一方の訪問型は、病児保育士が自宅に行き保育をします。病気の時には心が不安定になりますが、自宅でなら安心して過ごせるため、人気が高まりつつあります。
病院などでは病児を保育するための施設があり、看護師や保育士を配置することが法律によって定まっています。このような場所では、看護師資格や保育士資格を持った人が病児保育士として仕事をしています。
保育士や看護師の資格を持っていなくても病児保育士として働ける場所が訪問型です。
訪問型なら自治体の認可だけで働くことも
訪問型とは、病気の子供の自宅に訪問をして看護や保育をすることです。訪問型であれば、看護師や保育士の資格がなくても自治体からの認可だけで働けます。
ただし病気の子供を責任もって預かるためには、ある程度の知識やスキルが必要です。病気の子供を預ける側の親としても、何の資格も持っていない人に預かってもらうのは不安があります。ある程度のスキルがある人であれば、安心して子供を預かってもらえます。
スキルを証明するためには、資格取得が最短手段です。病児保育士には国家資格はありませんが、民間の資格があります。
病児保育士に関する民間資格
病児保育に関する民間資格は3つです。
・認定病児保育スペシャリスト
・認定病児保育専門士
・医療保育専門士
それぞれの民間資格について詳しく解説します。
認定病児保育スペシャリスト
認定病児保育スペシャリストは、日本病児保育協会が認定する資格です。 保育士の資格を持っていなくても18歳以上の人であれば誰でも受講可能です。
それでは、認定病児保育スペシャリストの概要を見ていきましょう。
受験資格
高等学校を卒業した18歳以上の人
受講費
受講費用:6万5,000円(認定試験料1回分8,000円を含む)
実習費用:1万円
1年ごとの更新料:5,000円
受講料の内訳
web講座受講料 | 52,000円(税別) |
受験料 | 8,000円(税別) |
資格登録料 | 5,000円(税別) |
試験について
認定病児保育スペシャリスト資格取得には一次試験と認定試験、2つの試験に合格する必要があります。1次試験は、全13回のweb講座についている小テストにすべて合格することで受験が可能になります。いつでも好きなタイミングで受験することが可能です。
出題内容 | 認定病児保育スペシャリスト資格取得web講座の内容から出題 |
合否 | 合否は試験終了後、その場でパソコンの画面上で判定が出る |
実習について
「認定病児保育スペシャリスト」資格取得には、病児保育従事者以外の方は「病児保育施設での24時間以上の実習」または「実習代替オンライン面接&実技」が必要です。
認定試験について
1次試験に合格後、認定試験に合格と実習を完了すれば、認定病児保育スペシャリストの資格が付与されます。
認定試験の受験資格
以下のすべてを満たしていること
①高校を卒業している18歳以上の方
②認定病児保育スペシャリスト資格取得web講座の1次試験に合格していること
出題形式
口頭試問及びロールプレイ(実技)
出題内容
web講座の学習範囲から2~3問出題
実施時期
毎年7月と1月(年2回)
認定病児保育専門士
認定病児保育専門士は、全国病児保育協議会が認定する資格です。この資格は誰でも取得できものではなく、病児・病後児保育室に勤務する保育士・看護師が対象となっています。
それでは、認定病児保育専門士の概要について見ていきましょう。
受験資格
以下の4つの条件をすべて満たしている人
- 全国病児保育協議会に加盟し、病児保育施設に常勤として2年以上勤務している保育士・看護師
- 非常勤で3年以上病児保育施設に勤務し、週20時間以上勤務していること
- 施設長から推薦を受けられること
- 「病児保育専門士認定講座」をすべて受講できること
受講費
研修費用:2万5,000円
認定料:1万円
資格取得について
資格認定までのプロセスは次の通りです。
- 資格認定ため参加登録手続き
- 資格認定研修会の参加
- 課題・研修レポートの提出
- 面接・口頭試問
- 登録および認定手続き
研修会に参加した後に2か月以内に課題やレポートを提出する必要があります。認定試験は面接と口頭試問です。登録後は、5年ごとに資格を更新する必要があります。
医療保育専門士
医療保育専門士は、日本医療保育学会が認定する資格です。
医療保育専門士を取得することで、医療保育士としての必要な専門知識を学び、病気の子供をケアするための正しいスキルが身に付きます。
それでは、医療保育専門士の概要を説明します。
受験資格
受験資格は以下の4つを満たしている人です。
- 保育士の資格を保持していること
- 病児保育施設で常勤1年以上であること
- 非常勤で年間150日以上かつ2年以上の実務経験があること
- 日本医療保育学会の正会員であり、申込み時に1年以上の会員歴があること
受講費
研修費用:2万5,000円
認定料:2万円
資格認定までのプロセス
資格認定までのプロセスは以下の通りです。
- 資格認定ため参加登録手続き
- 資格認定研修会の参加
- 課題・レポート・事例研究論文を提出
- 口頭試問
- 登録及び認定手続き
資格を取得するためには年に3回の研修会を受講します。1回目は1日、2回目と3回目は2日間の受講です。研修会参加後は、課題・レポート・事例研究論文を提出します。
認定試験は口頭試問のみです。
病児保育士とは?
病児保育士の仕事は病気の子供を保育することです。
病児保育士の働き場所は病児保育の専用スペースで病気の子供を一時的に預かる「施設型」と病気の子どもがいる家に訪問して子供を保育する「訪問型」の2つです。
ここでは、施設型の病児保育士の一日の仕事の流れを見ていきましょう。
- 受付・手続き
スタッフが病気の様子やお子さんについて尋ねる。
- 検温
検温ののち子供の状態に応じた保育計画を立てる。
- おやつ・遊び
果物やジュースなどのおやつを提供し、子供の状態に合わせて静かに遊ぶ。
- 食事・服薬・検温
子どもの状態に応じた食事を提供。食後は、医師の指示に従って服薬をサポート。
- お昼寝
お昼寝の付き添いをする。
- おやつ・検温
少量のおやつを与え、検温も行う。
- 遊び
迎えが来るまでゆったりと遊ぶ。
- お迎え
1日の様子や家庭での注意点を伝える
病児保育士の給料や年収
病児保育士の給与面について東京都の求人(スタンバイ)を参考に見ていきましょう。
企業内保育園の病児保育室
雇用形態 | 正社員 |
応募条件 | 正看護師、准看護師 |
勤務時間 | 7:45~18:15のうち、シフト制 |
給与 | 月給 230,000円 ~ 300,000円 |
待遇・福利厚生 | 交通費支給・社会保険加入・育休・産休制度あり |
社会福祉法人運営の病児保育室
雇用形態 | 正社員 |
応募条件 | 保育士 |
勤務時間 | 8:30~18:30 |
給与 | 月給23.5万円 |
待遇・福利厚生 | 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、退職金制度、家賃補助 |
病児保育の保育士
雇用形態 | 正社員 |
応募条件 | 保育士 |
勤務時間 | 8:30~18:30 |
給与 | 月給23.5万円 |
待遇・福利厚生 | 交通費支給・社会保険加入・制服貸与 |
病院の病児・病後児保育室
雇用形態 | 正社員 |
応募条件 | 保育士 |
勤務時間 | 8:00~18:30の間でシフト制 |
給与 | 月給25.1万円 |
待遇・福利厚生 | 交通費支給・社会保険加入・退職金制度 |
上記を見てわかるように、病児保育士の給料は、月給23~26万円程度です。
病児保育士のメリットやデメリット
病児保育士のメリットやデメリットを見ていきましょう。
メリットは以下の通りです。
- 残業が少ない
- 体力的負担が少ない
- 保護者の手助けができる
- 毎日変化を楽しめる
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
メリット1. 残業が少ない
病児保育士が預かるのは病気の子供です。一時的な預かりのため、何時まで保育するかはあらかじめ決まっています。そのため、残業も少ないです。
メリット2. 体力的負担が少ない
子供は病気のため、遊ぶ際も静かに遊びます。このため、体力的な負担は少ないです。通常の保育園と違って預かる人数が少ないので、子供一人一人とゆっくり関わりあいを持てます。
メリット3. 保護者の手助けができる
子供が病気になると保育園には登園できません。保護者は仕事が休めない場合、預かってくれる所を探すことになります。病児保育士は、病気にかかった子どもを預けられない保護者の手助けをするので、仕事を通じて人助けができます。
メリット4. 毎日変化を楽しめる
施設型の場合も訪問型の場合も、預かるのは病気の時だけです。毎日違う子供の保育をすることもあるでしょう。様々な子どもと関わりあいを持て、変化を楽しめます。
次にデメリットを見ていきましょう。デメリットは以下の1つです。
デメリット1. こどもの成長を見守れない
通常の保育園であれば、1年を通して子供の成長を見守ることができます。しかし、病児保育の場合には、子供が病気の時だけ預かるので、成長を見守っていくことはできません。
病児保育士になるにはどうすればいい?
病児保育士になるのは、3つの方法があります。
- 求人を探す
- 民間資格を取得する
- 転職エージェントに登録する
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
まずは求人を探してみる
病児保育士の求人を探して応募することは一般的な方法です。新聞の折り込みやハローワークなどで求人を探せますが、このような場所に出る求人は少ないです。
求人数が少ないため応募が殺到し、早めに応募を締め切ってしまう所もあります。求人を見つけたときにはすでに応募が終わっていたということもあるでしょう。
民間資格を取得してアピールする
「認定病児スペシャリスト」の民間資格は保育士や看護師の資格がなくても良く、高校を卒業した18歳以上であれば、誰でも受講資格があります。
この認定病児スペシャリストの資格を取得するためには病児保育所での研修があります。ここでの研修の際に、優秀な人材と判断された場合や人手が足りていない時など声を掛けられることもあるようです。
実際、認定病児スペシャリストの講座を実施している日本病児保育学会のHPの良くある質問のページを見ると、
「病児保育事業者では、「急な欠員」や「人材の流動性」といった課題を抱えています。また、求職者側としても、「どこに情報があるのか分かりづらい」という課題があります。
当協会では、資格取得者に向けて直ちに就職先をあっせんすることは予定しておりませんが、将来に向けては、病児保育を仕事にしたい人達を、施設や事業者に紹介する「人材紹介業」も事業として行っていきたいと考えています。」との記載があります。
今後資格取得者には就職先をあっせんしてくれる可能性もあるでしょう。
保育業界の転職エージェントに登録することも手
保育業界の転職エージェントに登録する方法もあります。
保育所に比べると病児保育所自体がまだまだ少ない状態なので、求人も多いとは言えません。しかし病児保育所では人手が足りない場合即戦力となる人材を欲します。
そのため、保育業界の転職エージェントのみに求人を出すところもあります。転職エージェントへの求人で非公開にしている場合、登録しなければ求人を見れません。転職エージェントへの登録は無料なので、複数の転職エージェントに登録をしておけば効率よく求人を探せます。
それでは、保育業界の転職エージェントを3つ紹介します。
保育求人ガイドは、保育案件シェア率87%。国内最大級の求人数から仕事を探すことができる保育士、幼稚園教諭に特化した求人検索サイトです。全国18か所にカフェブースを構え、お茶を飲みながら転職相談に乗ってもらえます。また、オンラインでの相談もいつでも行っています。
マイナビ保育士は、大手人材会社マイナビが運営している転職エージェントです。大手ということもあり求人数も豊富。また、求人先を紹介してくれる上に、就職後も手厚いサポートがあります。
保育情報どっとこむは、保育士向けの正職員・派遣・紹介予定派遣の求人を紹介してくれる転職サイトです。事前の職場見学が可能な上、担当エージェントが職場見学に同行してくれるので安心感があります。きめ細かいサポートを希望する人に向いています。
病児保育士の資格まとめ
病児保育所に対する世間のニーズは増えているので、病児保育士にも注目が集まり始めています。病気の子供を預かる仕事は、保育と看護の両面が必要になるので責任ある仕事です。また仕事を休めない親からは感謝されるのでやりがいを感じるでしょう。
- 民間資格が3つ
- 認定病児保育スペシャリストの資格取得には保育士看護師資格が不要
病児保育士には正式な国家資格はありませんが、民間資格が3つあります。資格を取得していれば、保育や看護・医療など幅広い基礎知識が身に付き、転職や就職も有利に進められます。
資格を取って、自分のスキルをアピールできるようにしましょう。
認定病児保育スペシャリストであれば、受験・受講に保育士や看護師の資格は必要ありません。高校を卒業した18歳以上の人であれば誰でも受験資格があります。保育関係の仕事に就いていない人でも、今後病児保育に携わりたいと考えている人、子供に関わる仕事に就きたい人、病児保育スキルの証明をしたい人など、空いた時間を利用して取得を目指せるので、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
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