医療系の専門資格である呼吸療法認定士は、一般の資格試験と異なり、やや高めの難易度に設定されています。
そこでこの記事では、呼吸療法認定士の資格取得がなぜ難しいのか?どこが難しいのか?具体的な話を試験の合格率や過去問データから詳しくご紹介していきます。
呼吸療法認定士の難しさを簡潔に
- 医療分野の専門知識が求められる
- 試験を受けるために様々な条件をクリアする必要がある
- 試験に合格したあとも、5年ごとに資格更新が必要
コンテンツ
呼吸療法認定士の難易度について
呼吸療法認定士の資格を取得するためには、呼吸療法認定委員会が定めた条件を満たして1年に1度実施される試験に合格しなければなりません。
ここでは、以下の 3つの観点から、試験に合格して呼吸療法認定士になるための総合的な難易度について考えていきます。
- 受験資格
- 出題形式
- 合格率
1, 呼吸療法認定士には受験資格がある
呼吸療法認定士の試験の受験資格を得るためには、3学会合同呼吸療法士認定委員会が認定する講習会を受講しなければなりません。また、認定講習会を受講するためには2つの条件を満たす必要があります。
認定講習会は2日間連続で開催され、全過程を受講するとその後3年間は呼吸療法認定士試験を受験する資格が与えられます。(2021年の認定講習はインターネットによる動画配信にて受講)
認定講習会を受けるための条件
臨床工学技士・看護師・理学療法士・作業療法士:実務経験2年以上
准看護師:実務経験3年以上
3学会合同呼吸療法士認定委員会が認める学会や講習会に参加し、合計12.5点以上の点数を取得していること(学会や講習会によって取得できる点数に違いがあります。点数は5~10点の範囲で定められています)
2, 呼吸療法認定士の出題形式と出題内容
呼吸療法認定士の試験は毎年11月下旬に実施され、出題形式と出題内容は例年同じ傾向であり、大きく変わることはありません。
呼吸療法認定士の出題形式
- マークシート式の筆記試験
- 試験は1日で行われ、午前・午後70問づつで合計140問出題される
- 約70%正解すると合格圏内に入ることができる
呼吸療法認定士の試験範囲はすべて公式テキストに書かれていて、呼吸に関わる分野が幅広く網羅されています。そのため、日常業務で専門的な環境である以下に該当する方でなければ、すぐに理解することは難しい内容になっています。
- 現在置かれている環境が集中治療領域・呼吸器内科・またはそこに出入りし診療・業務を行なっている
- 人工呼吸器に触れる機会が多い・RST(呼吸のケアチーム)に属している
- 呼吸器内科病棟で吸入薬には慣れ親しんでいる
受験対象が多職種である呼吸療法認定士試験では、最初からすべての内容を熟知している人はほとんどいないと言ってもよいため、受験者はテキストに書かれている内容を深く丁寧に理解していくことが求められます。
3, 呼吸療法認定士の合格率推移
呼吸療法認定士試験の過去5回の合格率の推移は以下の表の通りです。
合格率は職種別で違いがありますが、全体的には例年65%前後で推移しています。すべての職種で第20回(2015年実施)と比較して合格率は上昇傾向になっていますが、これは過去問や試験対策用のテキストが充実してきていることが理由だと考えられます。
第20回 | 第21回 | 第22回 | 第23回 | 第24回 | |
臨床工学技士 | 68.5 | 70.4 | 78.1 | 76.6 | 81 |
看護師 | 57.9 | 52.8 | 60.9 | 61 | 65.4 |
准看護師 | 23.1 | 16 | 32.5 | 30.3 | 39.4 |
理学療法士 | 68.8 | 63.3 | 67.8 | 65.6 | 67.2 |
作業療法士 | 60.7 | 50.4 | 62.6 | 55.6 | 61.2 |
全体 | 63.6 | 58.9 | 65.7 | 63.9 | 67.2 |
【総評】呼吸療法認定士の難易度はやや高い
呼吸療法認定士は試験自体の合格率は65%以上ではあるものの資格を取得するための難易度は高い部類に入るといえます。
受験対象者はそれぞれが医療の現場である程度の実務経験を持つ専門家ですから、その中でさえ65%前後という合格率というのは、決して簡単な試験ではないことを表しているでしょう。
実際の医療の現場で呼吸器疾患を相手に日々従事していても、試験までには十分な対策と勉強時間を持つことが必要です。そのぶん、呼吸療法認定士の資格を持つ医療者は、複数の高いハードルをクリアしてきた呼吸器疾患のスペシャリストととして厚い信頼を得られます。
呼吸療法認定士試験の難易度が高いとされる理由
- 呼吸療法認定士は試験を受験するための条件が厳しく設定されている
- 試験内容が専門的であるうえに出題範囲が広い
呼吸療法認定士に合格するための勉強方法
呼吸療法認定士の試験を合格するための勉強方法で一番大切なのは、出題範囲になっている認可講習受講のための公式テキストを理解することです。
呼吸療法認定士の試験では公式テキストに書いてあること以外の問題が出題されることはないため、公式テキストの内容を理解して覚えることが合格への確実な道筋になっています。
その上でテキストの内容を分かりやすく解説されている参考書やe-ラーニングを受講し、過去問を反復することで理解を深めていくことが効率的です。
1, 試験実施日から逆算してスケジュールを立てる
呼吸療法認定士試験に合格するためには、毎年11月下旬の試験実施日から逆算をして勉強を進めるスケジュールを立てることが必須です。呼吸療法認定士の試験範囲は専門的で膨大な範囲から出題されるため、短時間の暗記頼みの勉強法では攻略することは難しいからです。
特に申し込み初年度に合格を勝ち取るためには、スケジュールを立てることが重要です。例年であれば試験までの流れは次のようになります。したがって、5月から6月あたりから学習プランを立てることが最適でしょう。
呼吸療法認定士試験日までの主なスケジュール
- 講習の申込み:4月
- 公式テキストの配布と認可講習:8月
- 本番試験:11月末
2, 呼吸療法テキストや100日ドリルなどの教材を使って基礎固め
呼吸療法認定士試験のための学習は、基本的な内容を解説している参考書から始めることがおすすめです。
公式テキストは500ページを超えていて内容も専門的なため、呼吸療法に精通している人以外は聞き慣れない言葉が多く出てきます。また、十分な説明もされていないことが多く、いきなり公式テキストから全てを理解することは困難といえます。
そのため、公式テキストが配布されるまでの期間から認可講習を受けた復習を目的として参考書で用語の確認などの基礎固めが重要になります。
基礎固めにおすすめのテキスト
✓ 新・呼吸療法テキスト(3学会合同呼吸療法認定士委員会)
✓ 合格チャレンジ100日ドリル(メディカ出版)
✓ アステッキのe-ラーニング動画講座
3, 実戦問題集や過去問を利用してアウトプット
公式テキストや参考書を一通り網羅した後は実践問題集や過去問を利用して反復したアウトプットをしていきましょう。問題集や過去問に繰り返して取り組むことのメリットは3つあります。
- あいまいだった理解を深めることができる
- 自分の苦手分野を知ることができる
- 問題の傾向や出題形式に慣れる
呼吸療法認定士対策で有名な過去問題集は通称青本と呼ばれる「呼吸療法認定士予想問題集」やアステッキの「受験必修再現過去問集」です。
呼吸療法認定士の難易度まとめ
呼吸療法認定士は呼吸器疾患の診療や人工呼吸器などの機器を扱っている医療従事者に人気の高い資格の1つであり、受験資格を得るために認定講習を受講するなど複雑な条件をクリアしなければなりません。
試験の合格率は65%程度はあり、参考書や問題集も充実しているため試験対策が立てやすく、計画を立てて日々着実に学習を進めることが出来れば合格を勝ち取ることは十分可能な資格です。
呼吸療法認定士の資格は5年ごとの更新制度を設けていて、合格後も研鑽を重ねることを求めています。
そのため呼吸療法認定士の資格を持つ人は呼吸器疾患のスペシャリストとして認知されるため、呼吸器関連の診療をあつかう医療現場で働く看護師や臨床検査技師、理学療法士・作業療法士などの医療従事者は積極的に取得したい資格の1つといえます。