「行政書士試験に何ヵ月で合格できるか心配」
「難易度はどのくらい?」
具体的に行政書士の受験を検討している人は、このような不安を抱く方はいらっしゃるでしょう。または難易度を知らない方もいらっしゃるかもしれません。
行政書士試験の合格率は10%ほどと決して高くはありません。しかし「難しくて合格できないのでは」と不安に思わなくても大丈夫です。試験合格のレベルは1日3時間の学習なら1年程度で到達できると言われています。
この記事では行政書士の合格率や難易度を知り、学習計画を立てられるよう人に行政書士試験合格のために役立つ情報をお伝えします。
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行政書士試験の合格率は?年度別に解説
まず初めに行政書士試験の合格率をチェックしてみましょう。
行政書士の合格率推移!平均10%
行政書士の合格率は10%前後で、直近5年間の合格率推移は次のとおりです。
年度 | 受検者数 | 合格率 |
---|---|---|
2017年 | 40,449人 | 15.72% |
2018年 | 39,105人 | 12.70% |
2019年 | 39,821人 | 11.48% |
2020年 | 41,681人 | 10.72% |
2021年 | 47,870人 | 11.18% |
受験者の年齢層は40代がもっとも多く、次いで30代、50代となっています。行政書士が社会人受験者が多くを占める資格であることがわかります。
合格率が10%と聞くと「難しいのでは?」と疑問に思う方も多いでしょう。しかし行政書士試験は受験資格がなく誰でも受験できる試験のため、準備不足の方やとりあえず受けてみようという方が合格率を下げているとも考えられます。
合格率は受験者数に対する合格率の割合のため、合格率のみで難しいと判断するのは早いです。詳しくは次の「行政書士の合格率が低い理由は?3つの特徴」解説します。
行政書士の合格率がばらつく理由は?絶対評価だから
行政書士の合格率を見ると、年によってかなりばらつきがあることがわかります。このように変動している原因として、行政書士試験が”絶対評価の試験”であることが挙げられます。
絶対評価の試験とは、決められた合格基準を満たせば合格になる試験のことで他の受検者の出来は一切合否に関係しない試験のことです。行政書士試験には明確に合格基準点が決められているので、受験者はこれを満たすことができれば合格できます。
- 行政書士試験 合格基準点
- ①行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者
- ②行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者
- ③試験全体の得点が、180点以上である者
上記の合格基準さえ満たせば合格できるので、合格率に左右されずにきちんと勉強すれば短期合格も可能と言えるでしょう。
行政書士の合格率が低い理由は?3つの特徴
行政書士試験の合格率は10%前後で、決して高い試験ではありません。前項でも開設したように全体の60%正解すれば合格なので、300満点中180点以上を正答できれば合格できます。
しかし行政書士試験の合格率が低いのはなぜなのでしょうか。理由は以下が考えられます。
- 各科目で足切り点を超える必要がある
- 学習範囲が幅広い
- 受験資格がないため十分な対策をせずに受ける人が多い
それぞれ、詳しく解説します。
①各科目で足切り点を超える必要がある
行政書士試験の合格率が低い理由として、足切り点があります。どちらかの科目で高い得点を取得して180点を超えても、法令科目で121点以下・知識科目で23点以下では不合格となります。
このようなシステムは足切りと呼ばれ、バランスよく学習することが重要です。
行政書士試験での出題は「行政書士の業務に関し必要な法令等科目」と「行政書士の業務に関連する一般知識等科目」の2科目です。合格基準は次のとおりです。
- 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50%以上(246点満点中124点以上)
- 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上(56点満点中23点以上)
満点の40%以上と聞くと「あまり身構える必要がないのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし特に「行政書士の業務に関連する一般知識等科目」に関しては出題される試験範囲がかなり広いため、この足切りラインで不合格になってしまう方が毎年一定数いるということを頭に入れておいてください。
②学習範囲が幅広い
行政書士試験の合格率が低い理由として、学習範囲の広さがあげられます。行政書士の業務範囲は多岐に渡るため、知識ボリュームが求められます。
試験勉強では、法令科目5科目・一般知識3科目の合計8科目の学習を、バランスよく進める必要があります。また、学習計画をしっかり立てて、問題ごとの配点も意識しなければなりません。
学習範囲が広いということは、学習ボリュームが多いということです。学習がスケジュール通りに進まないため試験日までに範囲を網羅できず不合格となってしまう人が、少なくありません。
③受験資格がないため十分な対策をせずに受ける人が多い
行政書士の試験は、受験資格が設けられていません。そのため、法律知識を大学で学んでいる人は学びやすいでしょう。同様の法律系の国家試験である弁護士や司法書士と比べれば、行政書士の合格率10%が易しく見えてしまうのも事実です。
ですがこれは間違いです。行政書士は国家試験の中では、難関資格に分類される試験のため「少し勉強すれば合格できるだろう」というあまい気持ちでは合格することは難しいでしょう。試験の出題範囲が広いため、ある程度まとまった時間を試験勉強に費やす必要があります。
また独学などの場合には、法律を学んだことがなくても難易度の高い参考書を選んでしまったり、学習方法を誤ってしまったりなど合格するための実力をつけられないまま受験してしまう人がいます。全く法律に触れたことがない場合には、行政書士試験講座などを利用して試験対策を行うこともおすすめです。
行政書士試験ってどんな試験?内容と受験資格
行政書士試験の難易度を理解したところで、行政書士試験の概要を見てみましょう。
行政書士試験の評価基準は?絶対評価
前の項目でも紹介した通り、行政書士試験は相対評価ではなく絶対評価の試験です。次の要件のすべてを満たした受験者が合格になります。
- 行政書士試験 合格基準点
- ①行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、満点の50%以上である者(122点以上)
- ②行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、満点の40%以上である者(24点以上)
- ③試験全体の得点が、満点の60%以上である者(180点以上)
相対評価の場合は試験の出来が良かった順に合格になりますが、絶対評価の場合他の受検生の出来は一切関係がありません。このため行政書士試験は自分との戦いであると言えるでしょう。なぜなら合格できるのは合格基準点をクリアした者のみだからです。
行政書士試験の出題問題数は?例年60問
行政書士試験は、行政書士の業務に関し必要な法令と一般知識が60問出題されます。
- 法令分野から46問
- 憲法・行政法・民法・商法・基礎法学など
- 一般知識分野から14問
- 政治・経済・社会・情報・個人情報保護・文章理解など
試験形式はマークシート形式と記述式の2つです。マークシート形式では5者択一式・他紙選択式の選択肢問題が出題されます。記述式は全部で3問出題されますが、配点が試験全体の5分の1を占めるため合格するためには記述式でどれだけ得点できるかがポイントになるでしょう。
行政書士試験の受験資格は?なく誰でも受験できる
行政書士試験には、受験要件はないため年齢・学歴・国籍等にかかわらず、誰でも受験可能です。
2020年に実施された試験では、12歳~96歳と幅広い年齢層の人がチャレンジしています。きちんと試験対策をすれば誰でも合格を狙えますので諦めずに挑戦しましょう。
行政書士試験の勉強時間は?600時間以上
行政書士試験に合格するには、どのくらいの学習時間が必要となるのでしょうか。必要な勉強時間や合格までのスケジュールの立て方についてを解説します。
1年間で合格を目指す!1日3時間勉強が目安
法律初学者の場合、行政書士試験に合格するのに必要な学習時間は600時間~1000時間が目安と言われています。学習ボリュームが多い試験なので、行政書士講座などを利用した場合と独学で学習する場合とでは大きな差が出るでしょう。
独学を選ぶ方には法学部卒業生など法的な基礎知識を持つ方が多いようです。そのため必要な勉強時間は600時間程度で、行政書士試験の過去問を攻略するなどして出題傾向の分析を集中的に行うのが合格への近道になります。
行政書士講座を利用する場合は、講義と演習で1000時間程度の勉強時間が必要になります。入門レベル、基礎学習、応用学習、総復習と過去問対策と順番に知識をインプット・アウトプットできるようにカリキュラムが組まれているので初学者にはこちらの方がスムーズな学習と試験対策ができるでしょう。
行政書士講座を利用する場合も独学の場合も、無理のないぺースで学習するなら1日3時間の勉強を継続すれば1年間で合格を目指せます。
行政書士試験に合格したい!スケジュールを立てよう
行政書士試験の合格率は10%前後と難関のため、試験対策が不十分では合格は難しいです。試験勉強を始める前に試験日から逆算して学習スケージュールを立てておきましょう。
初学者が行政書士試験に合格するためには、どのような学習スケジュールを立てればよいか解説します。
独学の場合のコツ
行政書士試験対策を独学で行う場合、どの科目から学習すれば効率が良いかをリサーチしてから取り組みます。人によって、もともと保有している知識や仕事で触れている分野もあるので科目の順番は人それぞれです。
一般的には、民法・行政法を先に学習するスタイルが王道です。その後、予備校カリキュラムなどをリサーチして、自分で学習科目をスケジューリングします。
- 基礎学習期(試験前年度の11月~試験年度6月)
- 基礎講義のインプットと基礎力のアウトプットは、早いペースで終わらせるつもりで学習する。スクールを利用しない場合には、必ずどこかで遅れがでることを想定し余裕を持ったスケジュールに。
- 直全対策期(試験年度6月~11月)
- 予想問題、記述演習、模擬試験など本試験レベルのアウトプットにとりかかる。過去問を解いて出題傾向を把握する。
ちなみに、他資格を独学で取得経験のある人の場合には、テキストを読むよりより先に過去問を読む人が少なくありません。どのような問題が出されるのかを、先に把握してから学習を始める方法です。独学の場合は、自分にあった方法をリサーチすることがスタートラインとなります。
スクールや通信講座を受講する場合
行政書士試験対策講座を開講しているスクール・通信講座では、次のスケジュールが組まれた講座が多くみられます。
- 基礎学習期(試験前年度の11月~試験年度6月)
- 基礎講義のインプット、基礎力のアウトプットをする。
- 直全対策期(試験年度6月~11月)
- 予想問題、記述演習、模擬試験など本試験レベルのアウトプットをする。
本試験は例年11月に行われているので、1年間の講座が基本的なカリキュラムです。多くの講座は、短期学習の速習講座など学習時期に合わせたラインナップも豊富で、開始時期が遅れてもスタートできる講座もあります。講義スケジュールがタイトになりますが、学習期間が1年未満でもチャレンジできるのでぜひ検討してみてください。
行政書士試験に合格するためのスケジュールの立て方については「行政書士試験の勉強時間は600時間!スケジュールの立て方を徹底解説」でも詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。
独学に慣れていないなら?予備校の活用がおすすめ
独学は自分のペースで学習ができコストが抑えられるなどのメリットがありますが、効率的に学習を進めたい、行政書士試験に一発合格したいと考えるならば予備校の活用がおすすめです。
予備校を利用するメリットは以下が挙げられます。
- オリジナルの教材や講師からのサポートを受けられるのでモチベーションを維持できる
- 合格までのスケジュール管理がしやすい
- テキスト学習だけでなく授業で学習が進められる
特に初めて法律に関する学習をする方は躓きを感じやすい傾向にあります。予備校をうまく活用して行政書士試験合格を目指しましょう。行政書士試験対策におすすめの予備校については以下の記事で詳しく紹介していますので、予備校選びに迷っている方は参考にしてください。
資格講座名 | 資格スクエア | アガルート | ユーキャン | フォーサイト | 大原 |
コース名 | 行政書士実務講座 | 入門総合ライトカリキュラム | 行政書士資格取得通信講座 | バリューセット1 通常セット | 行政書士合格コース |
税込価格 | 40,800円 | 200,000円 | 63,000円 | 54,800円 | 188.000円 |
受講形式 | オンライン | オンライン | オンライン | オンライン | web通信 |
教育給付制度 | なし | 何度でも | 1日3問まで | 10回 | 各校に問い合わせ |
特典や割引 | 用意されているパックを購入 | オプションでマンツーマン指導や通学を選べる。早期申し込み30%off | メインテキスト10冊 | 合格したら最大2000円のアマゾンギフトコード | 時事対策などもある |
受講者の合格率 | 記載なし | 67.20% | 9% | 41.30% | 2020年76名合格 |
公式サイト | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
行政書士の仕事内容は?主な3つの業務を紹介
行政書士試験に合格すると、行政書士として働けるようになりますが具体的に行政書士はどんなことをしているかご存じでしょうか。行政書士の代表的な仕事は、書類作成代行業務・コンサルティング業務・市民法務です。それぞれ紹介します。
①書類作成代行業務
行政書士の具体的な業務として、書類作成業務の代行があります。建設業許可や飲食店営業許可の申請など、企業からの依頼を引き受けます。
また、相続や遺言、離婚など個人の依頼も引き受けます。これらの企業・市民と行政をつなぐ権利義務および事実証明に関わる書類作成代行業務が、行政書士のフィールドです。
②コンサルティング業務
行政書士は、企業の経営や法務に関する相談など、関係諸法令のプロとしてコンサルティング業務も可能です。
書類作成とあわせて経営に関する相談業務を引き受け、顧客企業の課題を法的にアドバイスするなど、さまざまな場面で活躍しています。
③市民法務
行政書士は、生活に欠かせない市民法務のエキスパートです。市民法務には、遺産分割協議書の作成・自筆証書遺言文案の作成・離婚手続・成年後見・交通事故の示談書作成など、暮らしにかかわるシーンでの手続きがあります。
資格取得で転職したい!行政書士は適切?
「資格を持っていたら転職しやすい」よく聞くその話は嘘ではありません。しかし資格と一口に言っても多種多様な資格が存在し、転職に役立つ資格もあればあまり役に立たない資格があるのも事実です。
行政書士は法律関連の仕事だけでなく幅広い仕事に生かせる資格と言えます。行政書士の仕事内容は官公庁に提出する書類の作成や手続きの代行に留まらず、各種申請書の作成など業務内容の幅が広い点が特徴です。資格を取得し、それを強みにして働きたいと考えている方にはおすすめできる資格のひとつでしょう。
行政書士は合格率が高め!転職に活かしやすい
法律関連の資格には弁護士や司法書士などがありますが、これは2つは合格率が極めて低く資格取得のためにかなりの年数が必要となるでしょう。それに比べて行政書士は合格率が10%程度と難しすぎず効率よく勉強できれば1年で資格取得を狙える資格のため、転職時の武器にしやすいです。
実際に行政書士に合格し転職している人は30代が最も多く、次いで20代、40代となっています。行政書士の募集が多い業界は建設業界や不動産関連業界、金融業界などです。試験勉強を始める前に志望企業や業界を決めておくと試験のモチベーションアップにもつながりますので、ぜひ行政書士の求人等を探してみてください。
行政書士だけでは転職できない場合も
行政書士としての転職先や働き方は様々ありますが、資格を持っていれば簡単に就職できるというわけではありません。一般企業では行政書士が採用の条件になっていることは少なく、公的書類に詳しい一般社員のような立ち位置での採用となる可能性もあるでしょう。
ビジネスマナーや一般常識、コミュニケーション能力なども求められますので注意が必要です。行政書士の働き方やどんな就職先があるか、行政書士の年収などについては以下の記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
行政書士以外のおすすめ資格は?「業務独占資格」がねらい目
行政書士以外で転職が有利になる資格なら”独占業務資格”がおすすめです。独占業務資格とは、その資格がなければ行えない特定の業務や行為がある資格をいい、有名な資格では税理士や医師、公認会計士、一級建築士などがこれにあたります。
業務独占資格は社会的需要の高い資格が多いので、求人が見つけやすく独立開業のチャンスもあるでしょう。法律・経営・行政に関する資格では、中小企業診断士、行政書士、社労士、ファイナンシャルプランナーなどがあります。
行政書士試験の合格率は10%前後!対策をすれば十分合格できる
ここまで、行政書士試験の合格率と学習スケジュールなどを解説しました。難易度は、直近5年間の結果をみると、10%前後となっています。
行政書士試験は、合格率の数値としては難易度の高い国家試験といえます。ですが、すべての科目を網羅的かつ効率よく学習できれば、1日3時間ほどの学習なら1年間で合格を目指せる試験です。
自分自身でスケジュールを組むことが苦手な人、不安な場合には、ぜひ、行政書士講座の利用を検討してみてください。